第15回

ウェットスーツはファッションか?

昨年の12月(2019年)にフリーダイバーの福田朋夏さんから連絡があって、5ミリと3ミリのフリーダイビング用のウェットスーツを作ってほしいって頼まれたんだ。「宮古島のダイビングショップと組んでフリーダイビングでのホエールウォッチングを企画していて、それ用に着るためのウェットスーツを作ってください」と話した。それで、今年の1月の終わりごろに5ミリと3ミリのウェットスーツを作って、彼女のところに送ったんだ。そのウェットスーツは、いつも彼女が着ているのと同じで、裏表がシルバーのダイビング用のウェットスーツなんだけど、彼女のInstagramを見ると、それを着て写っている姿がアップされている。彼女のウェットスーツを作り終えて考えたんだけど、ZEROのフェイスブックもそうかもしれないし、ZERO のInstagramもそうないんだけど、ZEROのウェットスーツを着ている人たちというのは、ファッションで着ているのではなくて、必要性があって着ているんだと思ったんだ。福田朋夏さんは、水深100メートルの深海を無呼吸で往復してくる。都合200メートルだよね。水圧に耐えながらその距離を潜って上ってくるためのフリーダイビング用のウェットスーツなんだ。彼女の場合は、シルバーのウェットスーツを着たり黒のを着たりするんだけど、それは彼女が命がけで潜っていくための道具としてZEROのウェットスーツが使われている。

 それから逗子の藤村篤、ジョーズのショアブレイクの岩場からパドルアウトするため、そのタイミングを見計らっている、印象的な彼の写真があるんだ。彼は背中にZEROのロゴが入ったウェットスーツを着て、手にはピンテールのガンを持って、インサイドの波が爆発している岩場で佇んでいる姿をうしろからカメラマンが撮ったショット。篤はジェットスキーに頼らないで、自力でジョーズのポイントまで行くためにあの危ない岩場から出ていくんだ。普通だったら、みんながやっているように彼もジェットスキーで引っ張ってもらってポイントで落してもらえばいいんだけど、実際には陸からジョーズにパドルアウトしていくわけだけどね。彼にとってのウェットスーツは、ピンテールのガンと同じように道具なんだよ。

 また、ジェリーさんもそうなんだけど、ジェリーさんは海に入ると5時間は上ってこないって言うじゃない。普通は2時間、3時間で上ってくるのに、それでも「長いよね」って言われるよね。でも、なんでジェリーさんは5時間も海に入っているのかって言ったら、体を守るためのウェットスーツを着て、良い波が来るのをジーッと待っていて、その波に乗るわけよ。ZEROのウェットスーツを着ている人たちというのは、自分がやりたいことのために最大限の自分のエネルギーを出し切るための道具として、ウェットスーツを使っているんだ。世間の作っているウェットスーツを見ると、右と左の色や柄が違うウェットスーツなどがあって、ZEROでもときどきそういうウェットスーツを作らされるけどね、「ファッションで、かっこいいから」って。また、どっちかの腕や足に輪っかで違う色を入れてみたりとか、そういうのって、「ファッションで板に乗って、ライディングしているところがスタイリィッシュ」なんて思うサーフィンスタイルとかスポーツスタイルというのと、ZEROは違うんだ、考え方が。おれは、右と左の色が違うウェットスーツを着ている人を見ると、片方だけ疲れちゃうんじゃないかとか、余計なことを考えちゃう。右と左はかならず均等に、ゴムの伸びる方向も伸び率もかならず均等に考えてウェットスーツを作っているのに、そんなことはまったく無視して、「色さえかっこよければそれでいい」って、こっちをバッテンにしたり、あっちをマルにしたりしているウェットスーツを見かけるけど、それはZEROでやるような仕事じゃないなって思うんだ。ファッション性よりも実用性、だって命が懸かっているんだもの。フリーダイビングも100メートル潜って何分もかけて上ってこなければいけないし、ジョーズだって、そうだよ。「どうやってここを出ていくの?」っていうようなインサイドの波が爆発しているような危ない岩場からパドルアウトしていくんだもの。

 サーフィンのことを考えると、ウェットスーツというのは極力無駄を省いて、いちばん良い波をいちばん奥から自分が乗っていくための道具であるというのがZEROの基本なんだ。ウェットスーツは道具であって、ファッションではないからね。5時間も入っていれば、片方の足や腕に輪っかが入っているようなウェットスーツを着ていたら、「そこの縫い目のところが痛くならないの?」って思うよ。だって、サーフィンをするのに必要ないんだもの、そんなの。

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