第7回
熱発泡とガス発泡
なんでおれがネオプレンゴム(注)の製造現場を見にいったのかというと、「なぜ最初にオニールのウェットスーツを買ったのか?」というところから話がはじまる。つまり、オニールのウェットスーツが使っていたラバテックス社のゴムの製造工程が知りたかったんだ。
ウェットスーツ・メーカーのなかで、ゴムのスポンジをどうやって作っているのか、またウェットスーツ用のスポンジの製法がいくつあるのかを知っているやつはほとんどいないと思うよ。発泡スチロールもそうだし、発泡のウレタンも、またネオプレンゴムも、発泡する科学製品はすべて、発泡するための方法がある。
それは基本的に2通りあって、熱発泡とガス発泡の2種類。一般的にコストが安くて、作りやすいのは熱発泡で、たとえば、フライパンでパンケーキを焼くようなものかな。熱した鉄板の上にゴムの材料を入れて、上下に挟んで発泡させるんだ。
日本の高品質の熱発泡製品はその開発能力にあると思う。世界的にもトップクラスで、日本で作られているネオプレンゴムは信頼性がある。日本のスポンジメーカーのなかにも、自然を大切にするとか環境問題に敏感なメーカーもいて、天然ゴムを使って製造したメーカーがあったけれど、実際にできあがった製品はやっぱり出来が良くなかった。すぐにバラバラになったり、ちぎれたり、品質や耐久性に問題があったようだ。調べてみたけど、日本のメーカーで天然ゴムを主成分にネオプレンゴムを生産しているメーカーは日本国内には1社もいなかったね。
発泡スチロールがそうなんだけど、ガス発泡でのネオプレンゴムの製造はフライパンで焼くのではなく、オーブンで焼くようなもので、熱風をゴムの材料に吹きかけることによって、ゴムを製造するのがガス発泡という製造方法なんだ。表面がつるっとしているのが熱発泡で、表面がぶつぶつしているのがガス発泡。ガス発泡は表面にガス穴の跡があって、きれいな模様が付いている。日本のウェットスーツ用のゴムは熱発泡で製造されている。
いちばんわかりやすいのは発泡スチロール、表面がぶつぶつしているでしょ。あれがガス発泡なんだよ。なんでガス発泡にするかというと、均等に発泡できる。良質な発泡ができるからなんだ。ところがガス発泡で製造するには高額な設備投資が必要で、大量に量産できる製品に関してはガス発泡で生産している。
(注)ネオプレンゴムはアメリカの化学企業、デュポン社が1930年に開発した合成ゴムの商品名で、一般的にはその主な原料であるクロロプレンからクロロプレンゴムと呼ばれている。天然ゴムより耐オゾン性、耐候性、耐熱性、耐油性、耐薬品性にすぐれ、加工も容易である。