その4
すくい縫いミシンも絶滅季語種の仲間入り?
文:川南 正
工業用のミシンは日本製が世界で一番優れたメーカーだけど、最近ではほとんど作っていない。今はたぶん台湾でライセンス生産をしているみたいだよ。1978年ごろ、おれが最初にウェットスーツを作りはじめた当初、すくい縫い用のミシンとして買ったのが奈良ミシンというミシンメーカーなんだ。このウェットスーツ用のすくい縫いミシンはもともと絨毯を縫うためのミシンだったらしいね。その後、いまではウェットスーツ用のミシンとして開発されて発売されている。その当時、すくい縫い専用のミシンを買っても、ウェットスーツ用に改造しないと縫えなかったんだ、ほかのミシンもそうだけど。当時、メーカーはそのままミシンを出荷してくるので、ミシンを販売していた専門店の人がウェットスーツの縫製用に改造してくれたんだ。だから、まず人伝てに改造してくれるミシン販売店を探しだして、そこからミシンをオーダーして買って使いはじめたという苦労話もある。また、ウェットスーツの縫製の歴史をひも解いていくと、なんでブラインドステッチ、すくい縫いになったのかとか、すくい縫いミシンの前に箱ミシンというのがあったりとか、ウェットスーツも時代によりミシンが変わって、ミシンによって作り方も変わってきているんだね。その辺の話は次の機会にでも話したいと思っている。
ウェットスーツの縫製だけにしか使わないすくい縫いミシンというのはほとんど発達していない状態にあるから、新しく改良・開発されることはほとんどないだろうね。だからこれからもいままでに製造された古いミシンを使っていくしかないのかなって思っている。サーフボードのシェイパーが使っているスキル社製のプレーナーを世界中のシェイパーが探し回っているように、すくい縫い用のミシンも段々それに似てきている。絶滅危惧種になってくるのかな。
これがすくい縫いミシンのマニューバ。裏側には縫い目が出ていない。英語でブラインドステッチって呼ばれるゆえんだ。もともとこのすくい縫いミシンは主にじゅうたんの縫製に使われていた。ゼロ・ウェットスーツでは、このミシンを使い、1ミリ厚のゴムでも縫うことが可能だ。
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