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エアドームのコンセプト

文:川南正


ジップレスのウェットスーツ、エアドームが開発されて発売したのが今から15〜16年前なんだけど、エアドームは今までにないコンセプトということで考えられたものだ。開発当時は、各メーカーが、水の入らないウェットスーツを考えていた。しかし、ダイビングから来ているほかのメーカーの考え方では水は入りにくくなればなるほど動きにくいウェットができ上がる。動きやすいウェットスーツという考えからすると、ゴムが柔らかい新しいうちは動きやすいけど、3ヶ月から半年ぐらい経つと少しずつ硬化がはじまる。だから、いつまでたっても柔らかいままというわけにいかないので、とくに冬用のウェットスーツは半年ぐらい着ないで置いておくと、速く硬化が進むので、ゼロ・ウェットスーツでは、ゴム自体の寿命を考慮して硬くなっても着られるという考え方で、普通のウェットスーツより上半身を大きくして動きやすいエアドームを開発したんだ。

 おれはもう年取って体型が変わっちゃったけど、20代、30代のときとか、バリバリに波乗りをやっているときの体型を見ると、背中の広背筋ってというの、水泳の選手みたいな背中の筋肉、広背筋がすごくついている。水泳選手の場合は浮力が必要なので、みんなわりと太っているけど、サーファーは浮力が必要ないので、筋肉質で、後ろから見るとボディビルダーみたいな体型をしている。やはりプロサーファーや年中波乗りしている人たちは、必然的にそういう体形になるんだね。

 その体形というのは、パドル時に手を伸ばして水をかくときの筋肉が発達してなるんだけど、ウェットスーツを着た場合、パドリングをすると、わきの下にしわができて、わきの下が擦れてミミズばれになるという指摘が、昔、サーファーからあったんだ。おれは、わきの下が擦れたら油でも何でも塗ればいいでしょうという考え方だったので、しわができるのは無視して、それよりも手を伸ばしやすくする、パドリングがしやすいウェットスーツを考えてエアドームを作ったんだ。案の定、しわというのはあっち行ったりこっち行ったりするから、かえって擦れなくなった。つまり、しわのでき方が毎回その都度変わるんだ。ぴったりしたウェットスーツにできるしわではなくて、ゆとりがあるウェットスーツにできるしわだから、実際に体に当たったところのしわは、それほど肌に影響がないことがわかったんだ。逆にその分、パドルがしやすくなるんだよ。ライディングをしているときのスタイルをイメージしてウェットスーツを作ったのではなくて、パドルしているときのスタイルをイメージして作られているのがエアドームということなんだ。

 エアドームはとくに真冬のウェットスーツとして考えてあるので、3ミリ以上、5ミリとか5.5ミリという厚いゴムをボディに使ってくると、当然、なおさらゴムの伸びが悪くなる。伸びをカバーするために、そこにゆとりを持たせていくわけだ。エアドームを発売した当初、「何かブカブカだから、ちょっと詰めてくれ」と言うお客が結構いたけど、今はそういうことを言う人はひとりもいなくなったね。着てみて初めてわかる話だけど、パドルして初めて「こんなに楽なウェットスーツはないんじゃない」というぐらい楽なんだよね。企業秘密なので、どの程度上半身を大きく作っているかは言えないけど、言葉にすれば、「ギリギリにでかい、必要以上にでかい」ということかな。たとえば、ノーマルジッパーなどの通常のウェットスーツでは、胸囲ではマイナス5センチぐらいが普通のぴったりしたウエットスーツの感覚なんだ。今は、ゼロ・ウェットスーツの真似をして作っているメーカーは何軒かあるけど、そういうゆとりのあるウェットスーツを作ろうとしてもエアドームのようにでかく作れないんだね、お客から文句が言われるのが怖くて。でも、おれは、「きつい」と言われるのは困るけど、「緩い」と言われたら、「よかったじゃん」という気持ち。人によっていろんな体型の人がいるから、エアドームを作っていて、全部が全部同じゆとり加減ではないのは事実だよね。ゼロで作るのは同じパターンのものをその人の採寸した数字に合わせて広げたり縮めたりしているだけの話だから。

 エアドームを考えたとき、半袖半ズボンもエアドームみたいなジップレスのウェットスーツにしようと思ったんだ。でも、それはやっぱりさすがに馬鹿な話で、必要ないんだね。やはり、冬用のウェットスーツが本来あるべきウェットスーツだというふうに考えると、いかに温かくサーフィンができるかということを突き詰めると、ゴムを厚くするっていうのが正しいやり方なんだよね、研究の結果からすると。温かいウェットスーツを着るためにはゴムを厚くする。ゴムを厚くすると、動きづらくなるので、そこをどうやって解決するかってことだけを考えているウェットスーツがエアドームなんだ。


秋冬の必須アイテム、エアドームのフルスーツ。パドルがしやすいように上半身にゆとりを持たせて作ってある。