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サーフィンと化学製品#5

更新日:2020年10月19日

ホビー・アルター その3

アルターとクラークが新しいサーフボードのブランクス、ポリウレタンフォーム(ウレタンフォーム)の製造に乗り出さなければいけなかった理由は、サーフボードメーカーが必要とする形状の製品が市販されていないことだった。当時も、そして今も巨大化学企業にとって、サーフボード市場はないに等しい存在だったのだ。化学製品の製造は素人だったふたりにとってウレタンフォームの製造は困難がつきまとった。ウレタンフォームはバルサに比べひじょうに気まぐれな素材で、発泡作業の工程において熱や湿度、また外気温などの影響を受けて、まともな品質の製品(ブランクス)を確保するまでに半年以上の時間と8,000ドル以上の資金、そしてアルターは潰瘍まで患うこととなったのだ。

 ウレタンフォーム工業会のホームページによると、「ポリウレタンフォームはNCO(イソシアネート)基を有するポリイソシアネートとOH(ヒドロキシル)基を有するポリオールを、触媒、発泡剤、整泡剤などと一緒に混合して、泡化反応と樹脂化反応を同時におこなわせて得られる、均一なプラスチック発泡体」と、科学的知見のない者にとってはまったく意味不明な製造方法が記されているが、材料がわかれば実験レベルで作るのは比較的簡単だという。しかし、実際に商業ベースのサーフボードのブランクスの開発・製造はアルターとクラークのふたりにとって試行錯誤をくり返す困難な道のりだった。 さらにいえば、ウレタンフォームを発泡させる容器、つまりサーフボードのカタチをしたモールドの材料にも苦慮したのだった。最終的にアルターとクラークは、サーフボードを縦方向に半分に分割したモールドを考案し、そのモールドは鉄で補強したコンクリートの型の中に焼いた石膏の殻をセットして作ったという。

 アルターとクラークはこのモールドを3基使い、ウレタンフォームの量産にかかった。溶剤を混ぜて発泡して冷ますまでに約40分、分割された左右ふたつのフォームを合わせてセンターにストリンガーを挟んで接着すると、重さ12ポンド(5.4kg)のウレタンフォームのブランクスができた。アルターはのちに「フォームはバターのスティックを成形するようなものだった」と、バルサ材によるサーフボードの製造工程がいかに大変だったか吐露した。こうしてホビー・サーフショップのサーフボードは、1958年6月から一斉にウレタンフォームとファイバーグラスを組み合わせた仕様へと入れ替わった。在庫のバルサボードは『ロサンゼルス・タイムズ』紙に「サーフボード・セール」という小さな囲み広告を出し、在庫のボードをすべて20ドル引きで売りだし、2日後には在庫を一掃した。

写真:Source: URL Hobie Surfboards

参考文献:『Hobie: Master of Water, Wind and Waves』 by Paul Holms、『The Surfer’s Journal』、EOS(Encyclopedia Of Surfing)、Japan Urethane Foam Association



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