文:川南正
ゼロ・ウェットスーツの、昔からあるタイプのウェットスーツがノーマルシリーズで、もちろんバックジッパー・タイプのウェットスーツだ。サーフィン用のフルスーツとして開発されたなかで、バックジッパーというのは、ファスナーが短くて済む、つまり、開口部がいちばん短くて済むというのが、最初の発想なんだよ。セミが背中から抜けだすのと同じ要領で、人間が手足を洋服の中へ入れたり出したりするためには背中が、いちばん開口部が少なくて済むんだ。映画『007』のジェームス・ボンドの時代は、フルスーツはフロントジッパーなんだよ。
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バックジッパーのサーフィン用ウェットスーツを、どこが最初にはじめたかは定かではないけど、たぶんオニールじゃないかな。1970年、おれが「ロージーズ」という輸入雑貨のお店を鎌倉ではじめたときに、ウェットスーツを売ろうと思って、当時アメリカのウェットスーツ・メーカーを調べたら、オニール、ボディグローブ、そしてシースーツの3社あったので、その3社に「ソールエージェントになりたい」って手紙を送ったんだ。そしたら、すぐにボディグローブから「日本に代理店があるから、そこから買ってくれ」って返事があった。手紙の中には、日本の代理店として米沢プラスティックの名前が書かれていた。マリブ・サーフボードをやっていた米沢プラスティックなんだ。米沢プラスティックは早かったね。ボディグローブも歴史はほぼオニールと一緒なんだ。で、オニールはプライスリストを送ってきた。シースーツも遅れて、プライスリストを送ってきたね。1970年初頭の話だよ。それで、おれは「ロージーズ」で、オニールとシースーツを輸入して売ったんだ。詳しくは、「ロージーズ」の項目を読んでくれ。
ジッパーの話に戻るけど、最初はダイビング屋がフロントジッパーのフルスーツを作っていたんだと思う。なぜフロントジッパーなのかというと、タンクを背負わなければいけないからなんだ。背中にジッパーがあると、邪魔なんだよ。だから、ダイビング屋が作るウェットスーツはフロントジッパーだったんだよ。最近はジッパーがよくなったので、バックジッパーになったんだね。開口部が少なくて済むから。それにデザイン的要素、フロントジッパーは見た目にもかっこ悪いからじゃないかな。創業当初、オニールが作っていたビーバーテールなんかもフロントジッパーだよね。(つづく)
バックジッパーの発想はセミの抜け殻?!ウェットスーツもバックジッパーだから、開口部が狭くて済む。
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