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ジッパーの話 その2

文:川南正


 ウェットスーツを作りはじめた当初、おれはどうやったらいちばん短い開口部で、体が出入りできるかという研究をしてみたんだけど、やはり背中側が開いているほうが、開口部が短くてすむことがわかったんだ。まず、首は開いていなければいけなじゃない。首から着る場合、やはりファスナーをつけずに着られればいちばんいいんだ。でもその当時、そこまで延びるゴム生地がなかった。そうすると、前にファスナーを付けるか、後ろに付けるか、または肩の横から付けるかなんだ。それで、試作を作っていろいろやってみたけど、フロントの場合はファスナーの長さが最低75cmないと、着られないことがわかった。どこまで短くできるか、さんざん試したんだよ。短くしすぎると、体が開けないからウェットスーツが脱げない。着るには着られるんだけど、脱ぐときはだれかにウェットスーツを引っ張ってもらわないと脱げないんだよ。その結果、開口部が75cm必要であることがわかった。それで、背中側は35cmのファスナーで脱げたんだ。つまり、フロントの半分の短さでウェットスーツの着脱が可能であることがわかった。いま、ゼロ・ウェットスーツでは、ファスナーの長さは、実際に着る人の身長と体重を勘案して決めていて、いちばん短い人では35cmのファスナーを使用している。もちろん着る人の歳も関係していて、脱げないという人もたまにいるね。肩が回らないから、脱げないんだよ。その人の場合、ファスナーをもっと長くしてほしいということで、45cmで作り直したよ。昔、ウェットスーツに付けるファスナーは、50mのロールになっていて、必要に応じて切って使っていた。もちろん自分たちで加工していた。いまは、最小ロットはあるけど、YKKにサイズを指定して、作ってもらっている。いまは、いちばん長いファスナーで52cmを用意しているけど、いちばん多いのは35cmと37cmだね。リボン(テープ)の素材はたぶんポリエステルだと思うけど、伸びちゃ具合が悪いからね。以前は、コットン(綾織り)を使っていたけど、務歯(むし/エレメント)の部分が金属だった。リーバイスのジーパンのファスナーのように、務歯もスライダーも金属を使っていた。それで、YKKが務歯をプラスティックに代えて、その後、スライダーもプラスティックに代えたんだ。そうしたら、一時、ジッパーが外れて開いちゃうトラブルが多発したんだよ。だから、ゼロ・ウェットスーツではトラブルを避けるために、少し前まで金属のスライダーを使っていた。サーフィン用のファスナーはもともとは医療用、工業用のファスナーだったんだけど、サーフィンでも需要が増えたので、塩害防止が可能な錆びないプラスティック製になった。


注:ファスナー(Fastener)は「しっかり留めるもの」という意味で、その起源は1891年、米国のホイットコム・ジャドソンが、靴紐に替わる開閉可能な留め具として開発したといわれている。


ゼロ・ウェットスーツのノーマルジップ・シリーズで使用しているYKK社製のファスナー。長さ35cm


ノーマルジップ・タイプのフルスーツ。5/3mmのExtendゴムは75,000円、3mmのExtendゴムは70,000円。5/3mmのZ-1ゴムは120,000円、3mmのZ-1ゴムは110,000円。



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