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ジッパーの話 その3

文:川南正


 ファスナーの起源は詳しくはわからないけど、たとえば、最初、衣服は紐で結んでいたわけじゃない。人がなにかを着るとき、ただシンプルな布状の衣服を羽織っていた時代があった。でもその羽織った衣服が風であおられたり、脱げそうになったとき、たぶん紐(ひも)で結わいて留めていたんだと思う。その次に、衣服に穴を開けてそこに枝などを差し込んで留めたんだろう。枝じゃなくて、鹿の角かもしれないけど。そのうちにだれかがボタンを発明した。でも、もっと細かく留めようとしたときにファスナー(注)が登場したんだ。ファスナーは靴ひもを結ぶのが面倒くさいという理由で発明されたらしいんだ。昔のリーバイスのジーパンはボタンだったよね。たとえばリーバイスの501。それからタロン・ファスナーが付いたリーバイス(505)が発売されるなどの経緯があって、タフな場面でも使われることによって、ファスナーの信頼性があがり、定着していくわけだ。構造的にも優れているファスナーは、さまざまな場面でも使われるようになり、どんどん改良が加えられるようになっていったんだね。


(右)リーバイス501は1890年にロットナンバーが初めてつけられたジーンズで、フロントの股部分はリーバイスで唯一のボタンフライ・タイプ。初期の501はベルトを通すベルトループが付いていなかった。(左)リーバイス505はリーバイスで初めてのジッパーフライ・タイプのジーンズで、デザインも501とは異なりテーパードのシルエットになっている。画像URL: www.levi.jp



 ゼロ・ウェットスーツが使用している防水型のファスナーはドイツのBDM社が開発した防水ファスナーで、もともとはオイルフェンスをつなぐときに使っていた。タンカーが座礁したときに使う、空気の入ったチューブ状のオイルフェンスをつないでいた防水ファスナーが原形で、それをウェットスーツ用に何度も改良してできた防水ファスナーがアクアシール(商品名)なんだ。それから、ほかにもいろいろなファスナーが開発されている。以前、硬い務歯(むし)の調子が悪いからもうちょっと柔らかいファスナーができないかなって登場したのが、務歯がコイル状になっているコイルファスナー。プラスティックの螺旋(らせん)状のファスナーだ。たぶん、ファスナーの構造は何種類もあるんだと思う。コイルファスナーは目立たないので、女性用の衣類によく使われているよね。表に出てこないファスナーなんだ。コイルファスナーは密着性がいい(水漏れがしにくい)というので、ウェットスーツ用に開発されていたことがある。しかし、丈夫さに欠けていて、タテには強いんだけど、引っ張り強度が弱い。横に引っ張られたときに開いてしまうんだ。で、サーフィン用でもトラブルが出て、使われなくなった。ゼロ・ウェットスーツでもさんざんテストしたけど、コイルファスナーのテープ自体も硬くて、背中に物差しを入れたような着心地なんだよ。柔らかくすると、さらに強度が弱くなって弾けてしまうしね。コイルファスナーだけではなく、YKKなどのファスナー・メーカーは密着性のいいファスナーの開発に注力しているんだけど、いま、もっとも密着性のいいのがZip Rockなどで使われているファスナーで、冷凍食品を入れたりしている。あの機能性を生かした防水ファスナーを作るのがベストだということで、ファスナー・メーカーはいろいろ工夫してみているようだけど、まだダメだね。というのは、ウェットスーツで使う場合、ダイビング用だったら大丈夫だろうけど、サーフィン用では、波に巻かれた瞬間にウェットスーツの中に入っている空気が外に押し出される。外にある水が中に入ってくるのではなくて、水圧で中に入っている空気が一気に押し出された瞬間に、ファスナーが爆発するわけ。ファスナーが外に弾けるというのが、一番の難点だった。(つづく)



YKK社の防水ファスナー、「Aquaseal」。YKKはドイツのBDM社が開発した防水ファスナーの特許を取得するために、BDM社を買収した。その技術で開発したのがAquasealだ。



コイルファスナーは務歯(むし)がプラスティックの螺旋(らせん)状になっている。ウェットスーツ用としてトライしたが、強度に問題があり、市場に出回ることはなかった。このコイルファスナーは表に出てこないので、女性用の衣服で多く使われている。




ノーマルジップ・タイプのウェットスーツに防水ファスナーを使用したアクアシールのフルスーツ。3/5mmのゴム厚、Extend使用で110,000円、同じく3/5mmのゴム厚、Z-1使用は130,000円。オール3mmのゴム厚、Extend使用で110,000円、同じく3mmのゴム厚、Z-1使用で120,000円。



注:ファスナーには大きくわけて3種類ある。ひとつは点ファスナーで、点で留めるもので、衣料用ではドット釦(ぼたん)が代表的なもので、英語ではスナップファスナーと言う。ふたつめが面ファスナー、面で留めるファスナーで、代表的なのがマジックテープやベルクロがある。そして3番目が線ファスナー、つまり、スライドファスナー、ジッパー、ジップ、チャックなどと呼ばれているものだ。

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