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ジッパーの話 その4

文:川南正


 サーフィン用で使われているいちばん丈夫なファスナー(注)というのは、ひとこま、ひとこま、務歯(むし)同士がしっかり噛みあっているものだから、そのファスナーのこま数が少なくなればなるほど、壊れる確率は下がる。つまり、短いファスナーほど壊れにくいということなんだ。たとえば、務歯が100個あるのと10個あるのでは、壊れる確立が10:1の頻度になってくるからさ。ファスナーの務歯を小さくして間隔を狭めれば、隙間は減るかもしれないけど、強度が足りなくなる。通常、ウェットスーツで使っている普通のファスナーのいちばんの弱点はこの務歯と務歯の隙間から水が入るということなんだ。いま、ゼロ・ウェットスーツで主に使っているファスナーは10Vというサイズで、この半分のサイズの5Vというファスナーもある。5Vのサイズのファスナーは、ゼロ・ウェットスーツでは手首とか足首用として使っている。でも、5Vのファスナーはやっぱり弱いけど、手が通らない、足がどうしても通らないという人がいるから、手首、足首用にこの5Vのファスナーを使わざるをえない。たとえば、足首を怪我している人や体に障害がある人にとって、ウェットスーツを着るにはどうしてもそれ用のファスナーが必要なんだ。


ゼロ・ウェットスーツのノーマルジップ・タイプのウェットスーツで使用しているYKK社製のファスナー。拡大してみると、務歯と務歯のあいだに隙間があり、ここから水が浸入してくる。このファスナー本来の欠点を補うべく開発されたのがアクアシールという防水ファスナーだ。


 前回も少し話したけど、通常のファスナーの弱点をカバーするのが防水ジッパーだ。最初に開発したのがドイツのBDM社で、YKKが使っている完全防水のドライファスナーも、特許を持っていたのがBDM社だったので、YKKはBDM社を買収して、いま、その特許を使ってドライファスナーを製造している。その完全防水のドライファスナーは、身近なところではドライスーツに使われているけど、宇宙服にも使われている最先端技術でもあるんだ。もしかしたら、最初はオイルフェンス用に作ろうと思ったわけじゃなくて、宇宙服用に開発したかったのかもしれないね。原理としては通常のファスナーと同じで、中に務歯が入っていて、ゴムを押しつけてかみ合ってくっつくようになっている。オニールは、BDM社が製造していた頃にこのドライファスナーを使ってスーパースーツと命名したドライスーツを作っている。アメリカ国防省だったと思うんだけど、北極海でも泳げるウェットスーツという触れ込みで売り込んだって、新聞で読んだ。おれは、このオニール社製のスーパースーツを日本で最初に輸入したんだ、1972年にね。もうすでにファスナーの開発はそこまで進んでいた。この完全防水のドライファスナーは肩口を横に開くタイプだった。



1972年に日本に初めて輸入したオニール社製のドライスーツ。この時点ですでドイツのBDM社は完全防水のドライファスナーを開発していた。



 ゼロ・ウェットスーツでは防水ファスナーとして、YKK社製のアクアシールを使っているんだけど、取りつけるときが大変なんだ。ノリの信頼性がないので、のり付けができない。のり付けだけだと、圧力がかかると外れる気がするんだ。だから、ゼロ・ウェットスーツではゴムに縫い付けてアクアシールを取りつけている。背中縦ファスナーのアクアシールの弱点が首の付け根のところ、つまりそこから水が入る可能性がある。各メーカーはいろいろな形状にして、なるべく水が入らないように工夫しているけど、完璧に水漏れを防ぐことはできない。じゃあ、首を絞めたらどうなるのって。息ができなくなるんだよ、最後は。だから、最終的にはノンジップ・タイプのエアドームのほうが理にかなっているわけ。(つづく)


上半身に充分な余裕を持たせ、パドリング時などの運動性を確保した、ゼロ・ウェットスーツの最上位のフルスーツ、エアドームはいままでにない着心地と保温性を保ちます。ゼロ・ウェットスーツが自信を持ってお薦めするエアドームをぜひ一度、お試しください。5/3mm、Extend生地使用で価格は100,000円。同じく5/3mm、Z-1生地使用で価格は140,000円。またオール3mm、Extend生地使用で価格は90,000円。オール3mm、Z-1生地使用で価格は130,000円です。



注:ファスナーの呼び方:ファスナー、ジッパー、チャックという呼び方があるけど、呼び方に差はない。ただし、チャックという呼び方は日本だけで、1927年に、日本にファスナーが紹介されたとき、あるメーカーが巾着(きんちゃく:布、皮などで作って、口を紐で結ぶ袋)を紐の代わりにファスナーを使い、チャックという名前を商標登録したところからきている。またジッパーは、1921年、アメリカのグリッドリッチ社が「ZIP」という擬音語から「ZIPPER」という名前で商標を取得し、それが広まった。日本では、やはりチャックという言い方が浸透しているけど、「ズボンのチャックが開いているよ」とか比較的小さめのファスナーを呼ぶときに使われている気がするね。

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