文:川南 正
コブラシリーズのウェットスーツは、長袖や半袖の袖の部分に1ミリのフラットスキンの生地を使っていることが特徴になっているが、そのフラットスキンの生地が、今現在、品薄になっている。その理由は、ゼロ・ウェットスーツでは「漉(す)きや」さんと呼んでいるけど、ゴムを漉く業者が、できあがったゴムが柔らかすぎるためにうまく漉けなくなっているからだ。とくに1ミリという極薄の生地ではなおさらだ。推測するに、機械が柔らかすぎるゴムを漉くのに耐えられないんだね。
ネオプレンゴムの製造方法は前に書いたので詳しくは省くけど、ゴムの生地を焼く場合、薄い生地を何枚も製造するには手間がかかるので、なるべく最大限の厚さの生地を焼くわけだ(詳しくはネオプレンゴムの発泡を参照)。今現在、どのくらいの厚さのゴムを焼くのかは、企業秘密らしくて教えてくれないんだけど、たぶん200ミリ(20センチ)ほどの厚さにしているんじゃないかと思う。できあがった200ミリのネオプレンゴムを必要な厚さに漉いていくわけだけど、薄くなったゴムのままだと柔らかすぎてうまく漉けないので、ジャージを貼ってからゴムをスライスする、つまり漉くんだ。ジャージを貼ってからじゃないと、ゴムが機械に食い込んでいかないらしい。以前は、そうやって漉くことができたんだけど、いまはゴムが柔らかすぎて、機械に反発されて均等に漉けないらしい。スライスする機械には確かローラーがふたつ回っていて、ゴムをローラーで挟みながら巻き込んでいって、その先にゴムをスライスする刃がついている。つまり、ゴムをローラーに挟み込むんだけど、現在のゴムが柔らかすぎて、うまく漉けないという問題が起きている。
200ミリのゴムを何回かに分けて漉いていき、ゴムがある程度の厚みになるとジャージを貼って半分の厚さに、それを何回かくり返していって、最後に2ミリの厚さのゴムを1ミリと1ミリの厚さのゴムができあがるわけだけど、フラットスキンのゴムというのはパンを焼いたときにできるパンのミミとおなじように端っこの部分しか取れない。つまり、200ミリの厚さのゴムから両端の部分しかフラットスキンが作れないという貴重部位なんだ。それは、半裁した断面部分はネオプレンゴムを製造したときの発泡した空気孔が無数に空いており、ジャージとジャージを張り合わせる接着剤によってカバーしているというわけだ(だから、ウェットスーツは経年劣化により気泡がつぶれてノリ面が弱くなり保温力がそがれていくわけなんだ)。しかし、ミミの部分はパンと同じように空気穴が塞がれているので、ジャージと接着剤で補強しなくても保温力は保たれているというわけだ。ちなみに、コブラシリーズのボディ部には強度を上げた2次加硫加工のスモークスキンを使用している。
ゼロ・ウェットスーツでは、「軽く、伸びも良くて、保温性もあり、動きやすい」というこのフラットスキンの特質を生かして、袖の部分に1ミリの極薄フラットスキンを使っているけど、ミミというのは端っこ部分だから大量に作れないので、品薄になっているということなんだ。それに1ミリという薄さに漉くこともなかなか難しくなっているので、近い将来には絶版になるかもしれない。コブラシリーズのウェットスーツをオーダーするのはいまのうちだよ。
パンのミミはカット面の表面に比べて、空気穴が少ないし、ミミの表面は硬いことがわかる。つまり、パンの製造方法と同じように、ネオプレンゴムの製造方法は熱発泡なので、原理としては同じ。そして、スライスした両端の部分がフラットスキンだ。
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