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貿易障壁

商売としては輸入制限、持ち出し制限があった。


文:川南正


おれは貿易の業務をやっていたのでわかるんだけど、なんでオニールのラバテックス社製のゴムを日本に輸入しにくかったかというと、当時のドルと円のレートが1ドル360円で、輸入した商品はすべて高額になっていた。それ以外の理由としては、日本からネオプレンゴムに貼るジャージ、つまり繊維製品を日本から輸出しにくいとか、海外からむやみやたらに輸入できないなどのルールがあった。

 鎌倉で「ロージーズ」というお店をやっていたときにカリフォルニアで流行っていたシープスキンブーツをオーストラリアから輸入したかったんだけど、日本には靴の輸入割当制度があって、シープスキンブーツをゴムゾウリ(ブーツ底がゴムでできていたから)として輸入するか、それとも革製品として輸入するかで手続きがちがった。当時、靴の革製品には輸入割当があって、日本国内に輸入できる革靴の数量が決められていたんだ。大手の靴屋がその年の輸入割当を全部持っていたから、小さな会社が革靴を輸入したい場合、大手の靴屋にコミッションを払って輸入割当を分けてもらわなければいけなかった。だからおれはそのとき考えたんだ、面倒くさいことになるのはやだなって。それで、当時、オーストラリアからナット・ヤングの板などを輸入していたジミー(山田)にまかせて輸入してもらったんだよ。

 おれは、詳しくは調べてはないんだけど、外国のネオプレンゴム、ようするに中国のウェットスーツのゴムを輸入して日本でウェットスーツを作っているメーカーがあるけど、中国のネオプレンゴムは安いんだね。でも貼ってあるジャージがちがうんだよ。日本の製品と比べると品質が劣るわけ。なんでジャージがちがうのかというと、日本の繊維製品は、戦後絹の繊維製品を輸出して以来、繊維製品の輸出割当制度があるから、それが貿易障壁になっていて、日本からジャージを輸出しにくいんだね。東レとか東洋紡などの大手の繊維メーカーが作る糸を織り屋さんが織って、ナイロンストッキングのようなどっち方向にも伸びるジャージの生地は日本から輸出しにくいんだよ、糸も含めてね。それは車もいっしょで、貿易障壁になっているんだね。だから日本からジャージを輸出できないから、中国製のジャージを貼るしかないんだ。中国製のネオプレンゴムが良いか悪いかは別にしてね。おれは、一時、ラバテックスのゴムに日本製のジャージを貼ろうと思って、アメリカに日本のジャージを持っていこうとしたんだけど、貿易障壁があってできなかった。だから、いまでもアメリカのラバテックスのジャージは硬くて肌触りの悪いジャージが貼ってあるんだよ。今やネオプレンゴムに貼ってあるジャージはウェットスーツの着心地とか着やすさ、動きやすさにすごく影響を与えているんだ。とくにサーフィン用ウェットスーツにはね。だから今、ウェットスーツ・メーカーも、ウェットスーツの生地を作るメーカーもみんな、ジャージの良し悪しに注目して、探しているよね。でも究極に考えてみると、じゃあ、ゴムはどこまで伸びるんだという話に行き着くんだ。そうすると、ナイロンの生地は伸びてすばらしいんだけど、ゴムは耐えられないよね。ゴムは3年経つと、硬化して硬くなってくると、ジャージの伸び率に付いてこれなくなる。それじゃ、むやみやたらに伸びるのが良いのかっていうと、そうでもないんだよね。やたらと伸びるジャージだと、中のゴムはばらばらに裂けちゃう。そういうウェットスーツを着ている人もいるけどね。「まだ着れます」って言っているけど、そのウェットスーツをチェックしてみると表側のジャージしか残っていないんだよね。中のスポンジはばさばさに裂けちゃっている。



写真は、裏が起毛のジャージーがつく、ゼロ・ウェットスーツ最高級の生地、Z-1。ジップレスのウェットスーツ、エアドームやスプリングロールに付く。

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