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アメリカ―イランの戦争がウェットスーツメーカーに及ぼす影響

文:川南 正


遠く中東の戦争が、なぜ海で使うウェットスーツに影響するのか。その鍵を握るのが、原油から生まれるナフサという原料である。

テレビや新聞など、あらゆるメディアが報じているアメリカ―イラン戦争。その影響としてまず注目されているのは原油の先行きだが、実際に現場で問題となっているのは、その先にあるナフサの供給である。

ウェットスーツ業界では、生地に使われるスポンジ自体の供給は、現時点では大きな問題はないと見られている。だが、生地同士を接着するボンド、そして塗布後の刷毛を洗浄したり汚れを落としたりする溶剤トルエンには、すでに影響が出始めている。その問屋からは、次回出荷分より40%から倍以上の値上げが通告された。接着剤がなければモノが作れず、溶剤が入手できなくなれば、刷毛は使い捨てにせざるを得ず、現場の負担は一気に増す。

知人のペンキ屋にとっては、さらに深刻だという。シンナーの入手が難しくなっており、価格が倍になっても「手に入るだけまし」という状況だ。ペンキを薄め、道具を洗浄するために不可欠な資材である以上、代替は効かない。

これは特殊な業界の話ではない。シンナーや接着剤、医療用チューブや手袋など、ナフサを原料とする製品は極めて広範に及ぶ。原料の供給が滞れば、メーカーは生産を抑え、稼働を落としてしのぐしかない。供給の見通しが立たない中で、現場はすでに防衛的な動きに入っている。

政府はナフサの在庫は十分にあると説明する。しかし現場では、買い占めや操業縮小が進み、供給への不安はむしろ増している。実態としては、第二のオイルショックに近い緊張感が広がっていると言っていい。

遠くの戦争は、原油を経てナフサへ、さらに日常の製造現場へと波及する。


おれたちにとっては、その連鎖を可視化する一例に過ぎないのだ。



 
 
 

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