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長く使えるウェットスーツとは何か?

2 時間前
読了時間: 6分

暖かさは、厚さだけでは決まらない

サーフィン用ウェットスーツの保温性と、Z-1という素材の可能性(その2)

 

文:川南 正

 

前回は、Z-1という素材が、冬のサーフィン用ウェットスーツの保温性に新たな可能性をもたらし、ウェットスーツづくりに対する私たちの考え方を大きく進化させたことについて書きました(ブログ「暖かさは、厚さだけでは決まらない」)。

今回は、もうひとつの重要なテーマである「長く使えるウェットスーツとは何か」について、これまでの製品づくりを振り返りながら考えてみたいと思います。




長く使えるウェットスーツとは何か

ウェットスーツを選ぶ際、価格や購入時の柔らかさ、保温性などに目が向くのは当然のことです。しかし、一着のウェットスーツと長く付き合うことを考えれば、耐久性や修理のしやすさ、さらには身体への負担の少なさも、見逃すことのできない要素になります。

私たちが運動性を重視して開発した「エアドーム」には、長年にわたって愛用してくださっているサーファーが少なくありません。なかには、10年ほど使い続けた製品が修理のために持ち込まれることもあります。長い年月を経たウェットスーツを目にすると、製品を開発した当時の考え方が、実際の使用を通じてどのように評価されてきたのかを、あらためて考えさせられます。

もちろん、すべてのウェットスーツが同じように長持ちするわけではありません。使用頻度や海に入る環境、日頃の手入れや保管状態によって、その寿命は大きく変わります。それでも、長く使い込まれた製品が修理のために戻ってくるという事実には、つくり手にとって大きな意味があります。そこには、単なる耐久性だけでなく、その一着を使い続けたいというサーファーの意思があるからです。

ウェットスーツは、購入した瞬間に性能の評価が終わる製品ではありません。海に入るたびに身体を動かし、伸縮を繰り返し、海水や日光にさらされる。そのような環境で使用されるからこそ、製品の本当の価値は、時間の経過とともに明らかになっていきます。

身体の動きを妨げず、寒さによる負担を軽減し、海から上がったあとも快適に扱えること。こうした性能の積み重ねが、日々のサーフィンを支え、結果として一着のウェットスーツを長く愛用する理由になるのだと思います。

つまり、長く使えるウェットスーツとは、単に丈夫であるだけでなく、長く使い続けたいと思える性能を備えたウェットスーツでもあるのです。

 

製品開発が教えてくれること

ウェットスーツの開発では、ひとつの性能を高めようとすると、別の性能との兼ね合いが問題になることがあります。たとえば、保温性を高めるために生地を厚くすれば、断熱性の向上は期待できますが、その一方で身体の動きに対する抵抗が増える場合があります。柔らかさを追求する場合にも、耐久性とのバランスを考えなければなりません。

サーフィンは、ウェットスーツを着用したまま、全身を使って運動するスポーツです。パドリングでは肩や腕を繰り返し動かし、テイクオフでは瞬間的に身体を起こし、ライディングでは絶えず姿勢を変化させます。こうした動きを妨げないことは、保温性と同じくらい重要な性能です。

エアドームの開発で運動性を重視したのも、ウェットスーツがサーファーの身体の動きに寄り添うものでなければならないという考え方があったからです。そして、その製品を長年愛用してくださるサーファーの存在は、開発時に重視した性能が、長期にわたる使用においても価値を持ち得ることを示しているように思います。

ここで重要なのは、製品開発の成果を、完成した時点の性能だけで判断しないことです。新しい素材を採用したり、構造を改良したりすることは、もちろん技術的な進歩です。しかし、その進歩が実際の海でどのような意味を持つのか、サーファーの身体にどのような違いをもたらすのかを考えなければ、本当の製品改良にはつながりません。

開発する側の理論と、使う側の経験。その両方を重ね合わせることが、ウェットスーツの完成度を高めていくのだと考えています。

 


Z-1がもたらした新しい視点

ウェットスーツの保温性を高める方法は、決してひとつではありません。生地を厚くして断熱性を高めることも、内部への水の侵入を抑えることも、有効な方法です。しかし、それだけでは説明できない快適性の違いもあります。

Z-1の開発を通じて、私たちがあらためて着目したのは、ウェットスーツの内部に存在する水分の動きでした。素材の厚さや柔らかさだけでは捉えきれない、水分の排出という特性です。

ウェットスーツは、身体と生地の間に入り込む水を完全に排除することが難しい製品です。そのため、水の侵入をいかに抑えるかという発想に加え、内部に存在する水分がどのように移動し、排出されるかという視点も重要になります。

Z-1の特徴は、この水分の動きに着目し、その特性をサーフィンという運動環境に生かそうとしたところにあります。保温性を考える際に、生地の厚さという目に見えやすい条件だけでなく、水分の挙動という別の要素にも目を向ける。それは、ウェットスーツの性能をより総合的に捉えるための、新しい視点でもありました。

もちろん、水分の排出だけですべての保温性能が決まるわけではありません。素材そのものの断熱性、身体へのフィット感、縫製や構造による浸水の抑制など、複数の条件が関係しています。大切なのは、それぞれの特性を理解し、サーフィンという運動に適した形で組み合わせることです。

素材の優秀さとは、特定の数値が高いことだけを意味するのではありません。その素材が持つ特性を、実際の使用環境の中でどれだけ有効に生かせるか。そこに製品開発の難しさがあり、同時に面白さがあるのだと思います。

 

長く使いたいと思える一着をつくる

エアドームを長年使い続けてくださるサーファーの存在と、Z-1の素材特性に着目した開発。一見すると異なる話のようですが、私たちにとっては、どちらも同じ問いにつながっています。

それは、サーファーにとって本当に優れたウェットスーツとは何か、という問いです。

優れたウェットスーツとは、単に暖かいだけのウェットスーツではありません。身体を自由に動かせること、余分な負担をかけないこと、そして海の中でも、海から上がったあとでも快適であること。さらに、その性能をできるだけ長く維持し、必要に応じて修理しながら使い続けられることも、大切な価値のひとつです。

新しい素材を使うこと自体が、開発の目的ではありません。素材の特性を理解し、これまでの製品づくりで培ってきた経験と結びつけることで、サーファーにとって意味のある進化を実現する。その積み重ねが、ウェットスーツという製品を少しずつ成熟させていくのだと思います。

暖かさとは、断熱性というひとつの性能だけで語れるものではありません。身体の動きや水との関係、さらには長時間着用したときの快適性まで含めて考えるべきものです。

そして、優れた性能とは、購入したときだけに感じられるものではなく、海に入るたびに、その価値を実感できるものであってほしい。

サーファーが長く使い続けたいと思える一着をつくること。そのために素材を理解し、技術を磨き、製品の完成度を追求していくこと。

それが私たちのウェットスーツづくりの基本であり、Z-1という素材にこだわり続ける理由でもあるのです。

 
 
 

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