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ゼロウエットスーツとジェリー・ロペス

12 時間前
読了時間: 3分

その5 英語の詩とジェリー・ロペス

文:森下茂男


 

前回に続き、フォトグラファーの近藤公朗が撮影したジェリー・ロペスの広告には、彼自身が考えた英語のメッセージが添えられている。

ジェリーの文章には、サーフィンを語りながら、いつの間にか人生そのものを語っているようなところがある。単行本『SURF IS WHERE YOU FIND IT』(Patagonia刊)を読んでも、それはよく分かる。新聞記者だった父と教師だった母。その家庭環境のなかで培われた言葉への感覚も、少なからず影響しているのかもしれない。

長い文章ではない。むしろ、彼が選ぶ言葉は驚くほど簡潔だ。しかし、そこには海で生きてきた人間だからこそ語れる実感がある。ゼロ・ウエットスーツの広告に寄せられたメッセージにも、そんなジェリーらしさがよく表れている。


Photo by Kimiro Kondo
Photo by Kimiro Kondo

【2013 AD Aloha to you】

Aloha Means Love.

In Hawaii, we greet Friend, loved onesand strangers with Aloha which means with Love.

Aloha is the key word to the universalspirit of hospitality that made Hawaii renown as the world’s center offellowship and understanding.

Try meeting or leaving your brothernobles with Aloha and you will be surprised by their reaction to the Aloha ofLove.

by Gerry Lopez

 

翻訳:

アロハ。

「アロハ」とは、「愛」を意味する言葉です。

ハワイでは、友人や愛する人はもちろん、見知らぬ人に対しても、「愛」を込めて「アロハ」と挨拶を交わします。

「アロハ」は、ハワイを人々の親愛と相互理解の地として世界に知らしめてきた、普遍的な「もてなしの心」を象徴する言葉です。

仲間たちと出会うとき、そして別れるとき、「アロハ」と声をかけてみてください。愛を込めたその一言が、相手の心にどんな反応をもたらすのか、きっと驚くことでしょう。

ジェリー・ロペス


Photo by Kimiro Kondo
Photo by Kimiro Kondo

【2014 AD Keep Paddling】

Life is one wave after another, youcan’t catch them all but if you pay attention, you can catch a good one....keep Paddling

by Gerry Lopez

 

翻訳:

漕ぎ続けよう。

人生には、波が次から次へとやってくる。そのすべてに乗ることはできない。けれど、よく見ていれば、きっといい波をつかまえることができる。

だから、漕ぎ続けよう。

ジェリー・ロペス

 

Photo by Kimiro Kondo
Photo by Kimiro Kondo

【2015 AD】

Be as simple as you can be; you willbe astonished to see how uncomplicated and happy your life can become.

by Gerry Lopez

 

翻訳:

できるかぎり、シンプルに生きてみよう。

そうすれば、人生というものがどれほど余計なものから解き放たれ、幸せなものになり得るのか。そのことに、きっと驚くはずだ。

ジェリー・ロペス


三つの広告を年代順に並べてみると、そこには一本の流れが見えてくる。

「Aloha」では、人と人との関係を語る。「Keep Paddling」では、人生と向き合う姿勢を語る。そして2015年には、「Be as simple as you can be」と、生き方そのものへと言葉が向かっていく。

愛をもって人と接すること。いい波を待ちながら漕ぎ続けること。そして、できるだけシンプルに生きること。

どれも難しい哲学ではない。けれど、それを何十年にもわたって海の上で実践してきたジェリー・ロペスが語ると、言葉の重さが違ってくる。

彼にとってサーフィンは、波に乗る技術だけではなかったのだろう。海を見つめ、波を待ち、自分の力で沖へ漕ぎ、やってきた一本を選ぶ。その繰り返しのなかから、自分はどう生きるのかという考え方が形づくられていった。

ゼロの広告に残された短いメッセージは、ジェリー・ロペスというサーファーが長い時間をかけてたどり着いた、生き方の断片でもある。

ジェリー・ロペスの原稿は、広告の言葉を追うことで、彼のサーフィン観だけでなく人生観まで見えてくるのが面白い。特に「Aloha」「Keep Paddling」「Be as simple as you can be」という流れには、ジェリー・ロペスという人物そのものが表れているように感じる。

 
 
 

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